[BlueSky:06977] 人間にとって成熟とはなんだろう?

OTSUKA Kimio kimio-otsuka @ nifty.com
2016年 3月 7日 (月) 15:08:50 JST


大塚です。

早々に挫折した本なのでお勧めできませんが、最後まで読んだ人がいればご教示
ください。

曽野綾子 人間にとって成熟とは何か 幻冬舎新書

 この本は2013年に発行され、出版3ヶ月で70万部を突破したベストセラー
だそうである。
 曽野綾子と言えば、先日アパルトヘイトを支持して物議を醸したなど、いろい
ろ話題を提供している人である。それらの中で、私の記憶に残っているのは原発
について、「えらい専門家の先生方が絶対安全と言っているのだから素人が文句
を言うな」といった感じで、原発の安全神話の布教に与していたことだ。
 強きを助け、弱きをくじく 上から目線の嫌なおばあさんだと思う

 福島の過酷事故後、この人がどう反省しているか、興味があってというのは嘘
で、きっと反省なんかしてないだろうな、と思いつつ、この期に及んでどんなこ
とを書いているのかと思って読み始めてみた。私は、曽野氏は筆を折って福島の
原発の廃炉が終了するまで蟄居すべきだと思っていたのだが・・・。

 結果から書くと、40ページも読まないうちに嫌になって読むのをやめてしま
った。19ページに以下のようなくだりがある。

 「人間の想像力というものは、実にある意味では貧しいもので、それが201
1年年3月11日の東日本大震災の被害を示す言葉にも表れた。つまり今回の津
波は「想定外」の高さだったという人が実に多かったのである。
 東京電力の関係者だけが、自分の責任逃れにそう言っているなら、私は不愉快
に思っただろう。しかし大震災直後のテレビの中で、いち早くこの「想定外」と
いう言葉を口にしたのは、その土地に住む人たちであった。「当事者」の偽らな
い感情なのだなと思えたのである。」

 すでに述べたように、早々に読むのが嫌になったので後の方で触れられている
のかも知れないが、私の印象では、どうも、この文章で、ご自分のことも赦され
たようである。カトリックという呪術的な宗教(私は、宗教は多くの呪術的な宗
教と一部の理神論的な宗教とに分けられると考えている)を奉じている曽野氏の
理屈は、浄土真宗という理神論的な宗教の門徒である私には理解しがたいことが
多い。

 1000年に一度ぐらいに大津波が来るというのは、既に見つかっていたこと
であり、原発をめぐる問題点も反原発の本を読めば、何十年も前から指摘されて
いた事ばかりである。数十年しか生きていない地元の人にとっては想定外でも、
原発や防災関係者に「想定外」という言葉は許されない。

 36ページからの1節で、曽野氏は「他罰的」という言葉で、若者を攻撃して
いる。しかし、一番他罰的なのは曽野氏ではなかろうか。

 20世紀の終わり頃、「知的怠慢」という言葉を使って論敵を非難するのが流
行したが、「知的怠慢」という言葉を使うことが、すなわち知的に怠慢であるこ
とが自覚されたのか、使われなくなった。「他罰的」という言葉で他者を非難す
ることが最近の流行だが、同じような問題をはらむこの流行も早々に終息するだ
ろう。

 最後まで読まれたきとくな方がいらっしゃったら私の思い違いをただしてくだ
さい。

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大塚公雄 



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