[BlueSky:07042] イタリアの保全生態

OTSUKA Kimio kimio-otsuka @ nifty.com
2019年 8月 3日 (土) 10:36:57 JST


大塚です

4がつの事なのですが、京大の野生動物研究センターで開かれたゼミを聴いてき
ました。

イタリアのボローニャ大学の Ettore RANDI さんによる、
Conservation genetics in Italy, a hot spot of Mediterranean biodiversity

イタリアにおける保全遺伝学 〜地中海の生物多様性のホットスポットで〜

というタイトルの講演でした。主にクマやオオカミの保全についてのお話でした。

絶滅危惧種の哺乳類というのは広大に地域に少しだけ生息しているのでその個体
数や個体数の将来予測に関する調査はとても大変です。そのような調査ができる
人材も不足しています。そこに、ゲノムレベルの塩基配列解析が可能になった近
年の分子生物学の手法を応用して成果を上げているという話です。

動物の数を調べるためには全部数えることができればいいのですが、難しい場合
には標識採捕法などの様々な手法がとられます。標識採捕法では、例えば100
頭捕まえた個体に印を付けてから放して、しばらく経ってからまた、100匹捕
まえます。印が着いていた個体が10頭再捕獲されれば、全体の10%が印がつ
いていたと見なして全体は1000頭ぐらいだろうという推測をします。
実際には死亡や移出入があるので、これを勘案した難しいモデルがたくさん出て
います。
あちこちでこれをやると、各個体の行動圏などもわかります。
ただ、この標識採捕法は捕まえるのも大変ですし、捕獲自体の悪影響もあります。

ランディさん達は、近年の分子生物学の手法を取り入れて、これらの問題に対処
しています。動物たちの通り道に櫛のようなものを設置して、それに引っかかっ
た毛を分析しています。これにより、毛の持ち主の種ばかりでなく、遺伝子から
個体識別も可能になっています。

お金はかかりそうですが、従来よりはるかに簡便な野外調査から詳細なデータを
取ってさまざまな保全活動が可能になったとのことです。

あと、興味深かったのは、イヌとの交雑でオオカミの集団にイヌの遺伝子が入っ
てきていることに関するトピックです。ある遺伝子座については、入ってきた遺
伝子ともともとのオオカミの遺伝子がヘテロ(例えば父からイヌの遺伝子母から
オオカミの遺伝子をもらって二つの遺伝子を動じに持つ)の時に生存に有利にな
るそうです。遺伝子が混ざってしまうのに拍車を掛けてしまうのは困りものです
が、面白い現象だと思いました。


特に議論を持ちかけるわけではありませんが、このような投稿でも気軽にお願い
します(管理人モード)。

-- 
大塚公雄 
現在、京都に住んでいます。
東福寺の紅葉はきれいでした。


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